大判例

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京都家庭裁判所 事件番号不詳 判決

本籍 香川県仲多度郡四条村大字吉野三百五十三番地

住所 京都市下京区西木屋町通五条下る平居町五十五番地

貸席業

杉野新 明治三十年二月二十五日生

主文

被告人を懲役六月に処する。

但し、本判決確定の日から三年間刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

事実関係

被告人は、京都市下京区西木屋町通五条下る平居町で貸席業を営むものであるが、右自宅に於て児童である長○ア○ミ(昭和十三年八月十日生)を酌婦として雇入れ、昭和二十八年三月七日、即ら雇入れの日から同月九日頃までの間五回に亘り、上○外四名の遊客に対し淫行させたものである。

証拠関係

右事実並に情状については

一、被告人の司法警察員、検察官に対する供述調書の各記載、並に当公廷に於ける供述。

一、長○ア○ミの司法警察員、検察官に対する供述調書、同児童の戸籍抄本の各記載。

一、領置に係る名刺の記載

一、被告人の前科調書の記載。

を綜合してこれを認める。

弁護人は売淫せしめた人数並に、被告人が淫行せしめた事実を争うものである。

仍つて按ずるにア○ミの遊客の人数については、同児童の前示供述調書の記載等一件記録により、六名であつたことを認めるに足る。第二点の事実については、被告人並にア○ミの前示供述調書の各記載によつてもア○ミが遊客と淫行した事実を認むるに充分である。抑々に淫行せしめた事実認定基準については、児童福祉法の立法趣旨に基き苟くも、被告人が酌婦として自己店舖に住込ましめた事実自体により自己営業の為、ア○ミをその支配下に置きたるものと認め、これを雇入れたるものと解し、又現に花代收入を切半して被告人が收受した事実等と相俟つてア○ミは被告人に対し、従属関係にありたるものと認めるに充分である。随つて淫行せしめたものと解する。

次に被告人はア○ミが十八才であるとの被告人に対する虚偽の告知、並に、その容貌風釆が満十八才以上に見えたから雇つた旨弁疎するも凡そ自ら酌婦たらんとする婦女子が雇主に対し、年令を年長者として偽ることはこれを常態とする。

惟うに児童福祉法の立法趣旨は、児童の健全な心身の発達を保護育成することを社会的に確保するにあることは、現に、労働基準法に於て年少労働者を正常な定業に就かしむる場合に於て雇主の少年に対する年令調査義務として公信力ある文書に依るべきことを命じている所以に照しても明らかであり況んや本件の如く児童の人格的な福祉に重大な影響ある淫行の業務に就かしむる場合に於ては必ずや最少限度の年令確認の調査方法として右公信力ある文書即ち、戸籍謄本、同抄本、米穀通帳等により雇入れに先立ち、その年令を確認すべき義務を負担するものにして、その満十八才以上なることを確認したる後、始めて雇入れるべき筋合にしてこの事は既に被告人も曩に関係公署よりの通達により知悉している次第で到底責任を免れ得ざることは明白である。

適条

被告人の右所為は、児童福祉法第三十四条第一項第六号、同法第六十条第一項、第三項に該当するから所定刑中懲役刑を選択して懲役六月に処するを相当と認め、刑法第二十五条に本判決確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については刑事訴訟法第百八十一条第一項を適用して被告人の負担とする。

(裁判官 野田竜之助)

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